認知症の方への対応でわかる力量

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僕が、、、

「介護士を続けるのもいいな」と思ったキッカケの一つに、

認知症の利用者さんたちと関わったことがある。

認知症だけど、、、

とても魅力的な利用者さんたちとの時間が、僕の中に眠っていた「人の役に立つ仕事をしたい」というピュアハートに火を点けたのだ。

ピュアハート、、、書いていて恥ずかしい(笑)。

「それまで眠らせてたのかいっ!!」と自分で自分にツッコミを入れたのは内緒だ(笑)。

今回はそんな魅力的な利用者さんたちの話、、、

、、、ではなく、

“認知症の利用者さんとの接し方でわかる、介護士の力量”という噺を書いていきたいと思う。

介護職の人はもちろんだが、ご家族に認知症の方がいらっしゃる方にも参考にしてもらえる内容だと思うので、介護従事者でない方にもぜひ読んでもらえたらと思う。

認知症という言葉を、、、

聞いたことのない人はおそらくいないだろう。

2004年に厚生労働省が公式に変更し、今では社会的に定着している呼称だが、変更以前は“痴呆症”と呼ばれていた。

対象となる疾患は変わらないので、どちらも同じ症状を表したものなのだが、

痴呆の“痴”には“おろか”という侮辱的な意味があり、“呆”には“ぼんやりする”という否定的なニュアンスがあるとのことから、

対象となる人の尊厳を守り、社会全体の理解を深めるという意図から、より中立的で、より医学的な表現である“認知症”という呼称へと変更されたらしい。

“おろかでぼんやり”という呼称は酷いと思うが、昔は(今も言っている人はいるが(苦笑))“ボケ老人”などとも言っていたから、社会的に蔑まれていたのは確かだと思う。

介護士になるまでは僕も、、、

認知症の方に対して、あまり好意的なイメージはもっていなかった。

それこそ“ボケ老人”と思っていたから、会話が成立するとは思っていなかったし、そもそも身近にいなかったから会話をする機会もなかった。

家族に認知症の方がいたり、介護業界や医療業界に従事している人でなければ、接する機会もほとんどないと思うので、

“認知症”という言葉は知っていても、実際に“認知症の方”と接したことのある人は少ないのではないだろうか。

接する機会がないのだから、実際の認知症がどんなものか、しっかりわかっている人も少ないのではないかと思う。

そんな感じだから、、、

家で介護をしているご家族が上手に認知症の方と接することができないのは至極当たり前だと思うし、

初任の介護職員が上手に対応できないのも仕方ないとは思うが、

“介護の専門家”である介護職員がそのままというのはプロとして恥ずかしすぎるので、「認知症の利用者さんはちょっと苦手」と思っている人はやはり認知症について自発的に学ぶべきだと思う。

実際、僕は学んだ。

理解しないと対応策も考えられないから。

そして、、、

今も認知症の利用者さんと接するたびに、新しい情報を意識的に自分の中にインプットするように心がけ、

認知症のタイプや個人差などに対する自分なりの経験則の拡充に努めている。

認知症というのは、、、

症状であって、その方の責任によるものではない。

、、、ということはまず理解しておかないといけないだろう。

生活習慣や食事などによって発症する、しないもあるだろうから、認知症になった責任が本人にまったくないかというとそう断言はできないが、「そんな生活習慣だから認知症になったんだ」とか、「こんな生活習慣を続けていれば100%認知症にならない」とか、そんな明確な法則はないし、介護サービス利用者の相当数──事業所によっては利用者のほとんど──が認知症の方であることを考えたら、

認知症は決して特別なものではなく、発症したからといってご本人が責められるようなものではないと言えるだろう。

そう、認知症は、その方の悪意や怠慢ではないのだ。

症状なのだ。

その進行を緩やかにするために服薬などの医療的治療も行っている症状なのだ。

介護の素人であるご家族は理解できていなくても仕方ないのだが、日々認知症の方と接している介護の専門家である僕たちは、絶対にそれを理解しておかないといけないと思う。

実際には、理解していない介護職員もけっこういるのだが(苦笑)。

そんな介護職員は、、、

認知症の方がおかしな行動(あくまで介護職員の目線で見てのものだが)をしたとき、症状を踏まえた対応ではなく、その方個人を叱ったりする。

「さっきも言ったでしょっ!」
「〇〇しちゃダメですっ!」
「早く〇〇してくださいっ!」

なんて怒鳴っている介護職員がいたら、「あーこの職員、認知症の方との接し方ヘタだな~」と思ってもらっていいと思う(笑)。

これらの言葉は、認知症の方に対する介護職員の声掛けとしては“禁句”だと僕は思っている。

とくに「さっきも言ったでしょっ!」は(苦笑)。

何度言っても理解してくれない、行動してくれない相手に苛立つ気持ちもわからないではないのでご家族が言ってしまうのは仕方ないと思うが、介護の専門家であるはずの介護職員が言ってはダメだ。

タイプや状態の違いはあれ、認知症の主要な症状は、記憶障害、見当識障害、遂行障害などなのだから、忘れてしまうのも、僕らが簡単にできることをなかなかできないのも、同じ話や行動を繰り返してしまうのも、その方にとっては仕方のないことなのだ。
※上記記載の症状は認知症の中核症状。認知症が進行するにつれ、周辺症状である不眠、徘徊、妄想、幻覚、興奮、うつ状態なども出てくる。

もちろん、認知症の状態は利用者さんごとさまざまだから、軽度の方相手なら通じるときもあるかもしれない。

でも、、、

それでも、怒鳴ってはダメだ。

認知症の方を恐れさせたり、怒らせたりして、良い関係を構築できるはずはない。

不眠や徘徊、奇行の原因を作ってしまうし、

そもそも怒鳴ってできるくらいなら、日常的に家族に怒鳴られている認知症の方は日常生活の多くを自分でこなせているということになる(笑)。

そんな成功例、、、僕は聞いたことがない(笑)。

加齢とともに物忘れが多くなったり、行動が遅くなったりはだれにでもあるが、その程度を越えているから認知症と診断されているわけで、介護の専門家である僕らはそれに応じた対応をしなければならないのだ。

認知症の方と、、、

正面切って対等に口喧嘩している介護職員を見かけることもある(苦笑)。

「何度言わせるんですかっ!早く〇〇してくださいっ!だ、か、ら~!」

認知症について少しでも理解していたら、対等に口喧嘩することが「いかに無意味なことか」「いかに相手にストレスを与えているか」「いかにプロとして恥ずかしいことか」わかりそうなものだが、認知症とはどういうものかを知らないのだからわかるはずもない。

、、、困ったものだ。

まあ、認知症の方でなくても、利用者さんと口喧嘩している時点で困ったものなのだが(苦笑)。

認知症には、、、

アルツハイマー型認知症
血管性認知症
レビー小体型認知症
前頭側頭葉変性症

というタイプがあり(それぞれのタイプの特徴については僕が書くよりももっと専門的で正しい情報がたくさんあるのでこのブログでは名称のみで(笑))、それぞれのタイプごとに症状の特徴もあるので、実際の介護業務ではそれを踏まえて対応しなければならないのだが、

個々の対応については各現場で考えてもらうとして、ここではタイプを問わず認知症の方に対する際の“共通認識”として覚えておいた方がいいポイントを書いておこうと思う。

それは、、、

認知症の方の“世界”は、僕らとは違う次元だということだ。

僕らから見ると“奇行”であっても、認知症の方の“世界”の中では“正しい行動”なのだ。

正当な理由があってその行動をとっているのだ。

頭の中では正しく行動しているのに、現実世界と合致していないから“奇行”になってしまっているのだ。

認知症の方の生きている“世界”とは、、、

学生時代だったり、働き盛りの頃だったり、長年住んでいた家だったり、まるでSFのような空間だったり(笑)、、、その方なりの“今”とは違う場所、時間だ。

たとえば、、、

デイサービスに通所している利用者さんであっても、ご本人は同級生の友人に会うために友人宅に来ていると思っていたり、

有料老人ホームに入所している入居者さんであっても、入所していることを理解できず、自宅に住んでいると思っていたり。

実際の話、、、

このページの冒頭で紹介した魅力的な認知症の利用者さんの一人は、僕のことを同級生だと思っていて、僕のことを「〇〇くん」と中学時代の同級生らしい名前で呼んでいたし、(笑)

有料に勤務していたときに出会った入居者さんは、トイレではない場所で排尿してしまったりしていたが、ご家族に聞いたところご自宅ではベッドから歩いてそのあたりにトイレがあるとのことだった。

僕らから見たら(現実世界では)間違った行動だが、ご本人としては(ご本人の世界では)正しい行動なのだ。

だから、、、

いくら僕らが正そうとしても変わらないのだ。

本人の中では間違っていないのだから。

会話が噛み合うはずもないのだ。

違う“世界”の話をしているのだから(笑)。

デキる介護士は、、、

それを、よくわかっているから、そして、そんな“世界”のことを理解しようとしているから、認知症の方への接し方が上手いのだ。

実際の対応は、、、

その方に応じて考えていかなければいけないし、「こうやっておけば大丈夫」というような単純なものではないが、

認知症の方が認知している“世界”が僕らとは異なる“世界”であることを理解していれば対応の的確さが高まるのは間違いないだろう。

その方が生きているのがどんな“世界”なのかを把握できれば、その方の発言の意味を理解することもできるし、傾聴もしやすい。

その方の“世界”に歩み寄った声掛けができれば、心を開いてくれやすくなるし、介護業務も円滑に進めやすくなる。

僕を同級生だと思っていた利用者さんに対しては、、、

僕は“〇〇くん”なのだ。

そこで僕が「いや違います!僕は◇◇です!」と言ったところで、その方を混乱させ悲しませるだけだろうし、

「何度名乗ったら覚えてもらえるんです?」と言ってしまったら傷つけてしまうだけだろう。

認知症の方の“世界”を理解できるかどうか──

それも、介護士の力量を測る一つのポイントだと僕は思っているが、

あなたはどうだろう?

認知症の利用者さんと口喧嘩なんてしていないだろうか?(笑)

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