介護士と言えど、、、
人間だ(笑)。
すべての利用者さんに平等に接しなきゃいけないのはわかっているが、やはり人としての好き嫌いはある。
もちろんプロだから、嫌いな人だからと言っていい加減な対応をしたりはしないし、その人にとって最良の介護をしようと心がけてはいる。
でも、それはそれ(笑)。
好きな人に「もっとやってあげたい」と思うのもまた人情というものだ(笑)。
(プロとして、表立って言ってはいけないことだが(笑))
僕が「介護士って仕事もいいな」と考えはじめたキッカケの一つも、そんな利用者さんと出会えたことだと思う。
当時70代後半だったHさん、、、
同級生の利用者さんだ(笑)。
え?同級生?
僕は何歳なんだ?って(笑)。
わざわざ書くまでもないと思うが、実際には同級生ではない(笑)。
祖父母世代とまでは言わないが、僕にとっては親の世代だろう。
Hさんは、、、
とにかく明るく優しく、そして楽しかった。
小規模多機能型居宅介護事業所のデイサービスに週5日で通所されていたのだが、お休みの日はみんな寂しがったほど。
デイのムードメーカー的存在だった。
あまり大きな声では言えないが(笑)、僕はHさんをいじって笑いを取りデイの雰囲気を盛り上げていたから、他の職員から見るとHさんが休みの日は僕も大人しかったらしい(笑)。
念のため明言しておくが、、、
僕はけっこう利用者さんをいじったり、からかったりしてコミュニケーションを取っているが、絶対にその方が傷ついたり怒ったりするようなやり取りにならないように気を付けている。
ただ面白ければいいとか周囲が笑ってくれればいいとは思っていない。
もちろんいじりだから、ご本人が苦手に思っているところや弱点と思っているところをネタにはするのだが、それでも、いじられた本人も楽しく思えるように言葉を選んでいる。
だれでも弱点を指摘されるのは嫌で、顔で笑っていても心は傷ついているなんてときがあると思うが、高齢の方、とくに認知症の方の場合は、大きな心のダメージとなってしまうこともあるので、冗談であっても声を掛けるときは本当に気を使っている。
実は、、、
皆さんと楽しく会話しているだけのように見えて、「この言葉は言って大丈夫かな?」とか「ここはツッコんでも大丈夫かな?」とか利用者さんの様子を見ながら頭の中をフル回転させていたりもするので、とてつもなく疲れることもあるのだが、
利用者さんたちが楽しそうだと、その疲れさえ心地よく感じられたりすることもある。
小さなことだが「介護の仕事をしていてよかった」と思うし、「日常的な介護士のやりがいってこういうことなんだな」と思ったりもする。
逆に、楽しんでもらおうといろいろ考えて、あんな話、こんな話をし、あんなアクション、こんなアクションを尽くしたのに、最後まで笑顔を引き出せなかった利用者さんがいたときなんかは、疲れが何倍にも感じられ、「今日は呑んで帰るぞ」みたいな気分になるときもある(苦笑)。僕はやけ酒をするタイプではないのだが(笑)。
でも、そんなことを繰り返した結果、その利用者さんと楽しい時間を共有できるようになったときは、それまでの苦労が報われるというか、達成感というか、、、
やっぱり「介護の仕事をしていてよかった」と思うし、介護士としてのやりがいを感じるものだ。
こう書いてしまうと、、、
ちょっと腹黒く思われてしまわれそうだが(笑)、僕は仕事として介護士をやっている。
高齢者や認知症の方のことを特別に好きなわけでも、おじいちゃん子、おばあちゃん子でもなければ、日常的に高齢者に対してやさしいわけでもない(もちろん、冷たいわけでもないが(笑))。
介護士という仕事に価値を感じて、そのプロでありたいと思うから、納得できるレベルの仕事をしたいと思うから、必死になって利用者さんのことを理解しようとしているだけだ。
決して善意や使命感で介護をしているわけではない。
そう、僕にとって利用者さんはお客様なのだ。
家族や友人ではなく、クライアントなのだ。
対価をもらって、お客様が幸せな日々を過ごすお手伝いをしているのだ。
だから、利用者さんに対しているときは、ただ楽しく話しているだけでなく、頭の中では計算もしているし“利用者さんにとって良い方向”と思われる方に誘導もしている。
話している内容と考えている内容がまったく逆の時もあるから、他の人からは楽しそうに見えていても、実は心の中では焦っていたり、イラついていたりする時もある。
「楽しい思いは伝染する」と思っているから(認知症の方はそういう空気に敏感な方も多いので、作り笑いや心無いトークをするとバレる(苦笑))、利用者さんとやり取りするときは、できるだけ「心から楽しいと思うようにしよう」と心がけてはいるが、笑顔で話をしていてもまったく楽しくないときもあるのだ。
でも、、、
Hさんとのやり取りは、毎回本気で楽しかった(笑)。
僕のことを信頼して(くれていたと僕は思っている(笑))、仕事の悩みや苦労話をしてくれたり、僕の体調や心情を気遣って優しい言葉を掛けてくれたり、他の職員以上に僕のことを気にかけてくれた。
僕がいじるのではなく、僕をいじってくれるときもあった。
それがまた洒落がきいていて、いじられていてちょっと嬉しかった。
僕を同級生と思っているくらいだから、、、
認知症は軽度ではない。
デイサービスに来ているということも正確には理解されていなかったと思う。
仲間の集まりに来ていると思っている日もあれば、出張かなにかで泊まりに来ていると思っていたときもあった(今朝来たのに「昨日から泊まっているんですよ」とよく言っていた(笑))。
高齢の方、とくに認知症の方では多いのだが、入浴を拒否されることも多かった。
ご自宅では介助できないため入浴はデイでのみだったのだが、「昨日入ったから今日は入らない」と(もちろん昨日は入っていない(笑))。
他の職員は頭を悩ませていたが、そんなときのやり取りも僕は楽しかった。
「一番湯です。背中流させてくださいよ」とか「娘さんからサッパリしてきてって言われました」とか「ちょっと男同士の相談が」とか、Hさんの男気や優しさに付け込んだトーク(こう書くと悪そうだが(笑))を考えるのも楽しかったし、それで気持ちよく入浴してくれたときの嬉しさや達成感は介護士としてのやりがいにもなっていたし、この時の経験は利用者さんに対する僕の引き出しを大きく広げてくれたと思っている。
認知症の方に対して、、、
あなたはどんなイメージを持っているだろうか?
会話が成立しない
同じ話を繰り返す
困った行動が多い
──などだろうか。
おおむねネガティブなイメージなんじゃないかと思う。
介護の仕事をはじめるまでは僕もそうだった。
認知症の方への対応でわかる力量 というページでも書かせてもらったが、まったく好意的なイメージはもっていなかった。
でもそのイメージが、、、
介護の仕事をはじめて、最初に勤務した事業所でHさんをはじめとする利用者さんたちと出会って、ガラリと変わった。
認知症自体のことを少しわかったということもあるが、それ以上に「認知であろうがなかろうがその方の魅力を作るのはその方の人間性」ということに気づいたからだ。
決して軽度ではない認知症だったから、Hさんのご家族は日々たいへんだったろうと思う。
デイへの送り出しをされていた娘さん(結婚してご近所に住まれていたが朝のデイ迎え時間に毎日いらしていた)、出迎えをされていた奥さん、そして時々ご自宅で見かけた息子さんやお孫さんたち、、、
家族内での葛藤や悩みは尽きなかっただろうし、そのご苦労は容易に想像できる。
でも、、、
Hさんは、愛されていた。
奥さんにも、娘さん、息子さんにも、お孫さんにも。
少なくとも僕の目にはそう見えていた。
送り出しの娘さん、お迎えの奥さんとのやり取りでも毎回それを感じさせてもらった。
そして、、、
ご家族だけではない。
他の利用者さん、他の職員からも愛されていた。
もちろん僕も大好きだった。
利用者さんと介護士の関係ではあったが、人として、人生の先輩としてリスペクトもしていたし、
これまで家族のために頑張ってきた大先輩のこれからの時間も幸せ溢れるものになるように、介護士としてできる限りのことをしたいと思っていた。
認知症だから、、、
苦手なこともあるし、話のつじつまが合わないこともある。
転倒リスクもあったが危機意識はあまりなかったからすぐ立ち上がったりもしていたが、それでも──
そんなことが気にならないくらい、人として魅力的だった。
他の方に優しく、明るく、男気があって、周囲を楽しませようと気遣ってくれていた。
認知症だから、、、
介護サービスを受けているのだが、それが「その方の人間的価値を左右するわけではない」ということを、そして、
認知症であっても“魅力的な人”がいることを、Hさんはじめ何人かの利用者さんが僕に教えてくれた。
医学的に正しいかどうかはわからないが、、、
年齢を重ねると、とくに認知症となると、その人の素の部分が表に出てくるのではないかと、僕は介護士としての経験から感じている。
もともと物事に対し細かった人はより細かくなり、他人を批判ばかりしてきた人はより批判的になり、ネガティブ思考だった人はより悲観的になり、、、という具合に。
そういう方々が不穏にならないように、社会生活の中で支障をきたさないようにサポートするのも介護士の重要な仕事だと思うが、
Hさんのように魅力的な人がより幸せに過ごせるようにサポートするのも介護士の仕事だと思うし、
それは小さな喜びややりがいではあるが、実は介護士をやっていて日常的に一番嬉しいことなのではないかとも思う。
認知症は楽しいとか、おもしろいとか、、、
そういう書き方をすると表現的には不謹慎かもしれないが(苦笑)、
そして、一言で認知症と言っても、
その状態(軽度と重度ではまったく異なる)やその方のもともとの性格や人間性によってまったく行動や発言は異なるかもしれないが、
Hさんたちとのやり取りを通じて、新米介護職員だった僕はそう思った。
楽しい、おもしろい、と。
今思えば、認知症がどうこうではなく、利用者さんとのやり取りが楽しかったり、おもしろかったりで、その利用者さんがたまたま認知症だったという話なのだが。
僕の中にあった認知症に対する偏見や誤解を、、、
消してくれたHさんたちには感謝してもしきれないし、今も好感しかない。
きっと当時は、介護をしていて悩まされたこともあったと思うのだが、悪い記憶はまったく残っていない(笑)。
それくらい介護士として充実した日々を過ごしていたんだと思う。
もう何年もお会いしていないが、、、
僕に介護士の仕事の魅力を教えてくれたHさんが今も元気で幸せに過ごされていることを願っている。


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